就農者インタビュー

Start Farming

澤田光さん
親元就農

生まれ育った故郷に、妻の理解をえて家族でUターン

澤田 光さん(26歳)順一さん(父・56歳)
[土佐町/施設花き農家]

光さん:県内の高校を卒業して九州の大学へ進学後、九州の農業法人で野菜栽培に携わっていました。実は、いつか高知に帰りたいと思っていたのですが、たまたま結婚前に土佐町に帰った時、自分が生まれ育った町の良さに改めて気づき、「結婚して住むならここ土佐町、そろそろ帰ろう」と決心しました。
 ただ、山間部の実家に帰り妻子を養っていくためには、農業しか選択肢はありませんでした。これまで、実家の花栽培を継ぐつもりはなかったので、農業は手伝い程度しかしたことがありませんでした(笑)。
 でも、さすがに妻は「いいよ」とはすぐには言わなかったですね。九州で当時住んでいたところより全然田舎で、24時間営業のコンビニはないし、「こんなとこで住めるのかな?」と。また、これからの子育てのことを考えると、安定した収入がないことにも不安を感じていたようです。
 そこで自分から「高知市内には1時間以内で行ける。土佐町は子育て支援策が充実している。何より、自分が今以上に稼げるよう頑張る」と伝えると、納得してくれました。実際住んでみたら、全然大丈夫だったようです(笑)。

農家の息子でも、きちんと基礎から学ばせたい(父)

(父)順一さん:今、標高500mの冷涼な気候を生かして、トルコギキョウを主体に、アネモネ、キンギョソウ等の草花品目を組み合わせた経営を行っています。私としては、やっぱり農業をやってもらいたかったので、「家族で土佐町に帰り、農業をやりたい」と聞いた時は嬉しかったです。
 ただ息子は、農業法人に勤めていたといっても花き栽培は素人で、就農するなら農業の基礎を学んで欲しかった。普及所に相談に行った時に、産地提案書による後継者の育成発展を支援するための農業担い手支援事業を教えてもらい、高知県立農業担い手育成センターでの3ヶ月以上の研修メニューもあったので活用することにしました(花き栽培の産地提案書利用)。
 私は以前、研修で農業担い手育成センターを訪問したことがありますが、最新施設・機器が揃っており、基礎から最新技術までを学ぶには良い所だと思っていたので、息子には勧めました。中でも、土作りや土壌消毒の知識を学んで欲しいと考えていました。

光さん:父親が事業の話を進めてくれている間に、長男が無事生まれました。私は妻子を九州の妻の実家に預け、仕事をやめて一足先に高知の実家に戻り、3ヶ月間の農業担い手育成センターでの研修が始まりました。

農業担い手育成センターでの研修は、自分にとって必要なものでした

澤田光さん

光さん:実は、高校からずっと寮生活だったので、正直、農業担い手育成センターでまた寮生活に戻るのはいやでした。でも実際に入校してみるとプライベートもあり、良かったです(笑)。同世代の研修生はいなかったけど、苦じゃなかった。みんな農業に夢を抱き、ともに研修する仲間と、いろいろな話ができて面白かった。
 農業担い手育成センターでは花の栽培がなかったですが、花農家や農業技術センター花き科に視察に行くこともできました。また、栽培したことのない野菜に触れたことも楽しかったです。
 授業が眠くなかったのはここが初めてで(笑)、期待していた土壌肥料についても、1対1で教えてもらい初心者レベルは脱したと思います。土壌消毒の勉強もさせていただき、これからの経営に役立てていきたいと思います。
 もし農業担い手育成センターに行ってなかったら、親の農業が全てで、農業の現状や先進技術等を知ることもなかったと思います。私のように農業の基礎知識もなく、仕事を辞めてから農業を始める場合、最初に農業を学ぶためには良い所だと思います。

花き栽培の技術を向上し、早く親の経営を継承したい

澤田光さん

光さん:農業担い手育成センターでの研修修了後には、妻子を高知へ呼び寄せ、家族水入らずで土佐町のアパートで暮らしています。実家のハウスまで毎日通勤、妻は他の仕事をしながら、家計を助けてくれています。

(父)順一さん:今、5aハウスの栽培を息子に任せていますが、将来的にはいくつかのハウスの栽培と経営を担ってもらう予定です。来年からは、何を植えるか、どうやったらお金を稼ぐことができるかを、自分で経営者としての責任を持ってやって欲しいと思います。

光さん:ハウスを任されていましたが、実際は親が作ったものを収穫するだけで、まだ面白いというレベルではありませんでした。しかしこれからは、親が少しでも楽できるように、自分自身の技術を向上させ、早く父の経営を継承できるように頑張っていきます。