農業を始めたい方へ

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松橋亮さん
自営就農

40歳を機に起業を決意

松橋 亮さん(46歳)
[安芸市/ナス農家2年目]
移住就農

 神奈川県の出身で、約20年間美容系の仕事をしていました。美容師として働いた後、外資系美容メーカーで美容院の経営サポートやスタッフの教育など幅広い仕事を経験しました。仕事をしながら、いつかは自分で起業したい、経営したいと考えるようになり、40歳になるタイミングで行動に移しました。
 長年美容業界に携わってきましたが、「何で起業するか?」については特に美容関係にこだわらず、幅広く様々な業種を探そうと思っていました。ただ、地方で起業しようという思いがありました。自分自身都会に住んでいて、首都圏での起業はリスクが高いと感じたからです。そこで、西日本エリアの移住相談会に通い、様々な分野の話を聞きました。約半年かけて西日本全ての移住相談会を網羅しましたね。笑

移住地と業種の選択

 高知県に移住を決意したきっかけは移住相談会で出会った担当者の人柄でした。もともと西日本は縁もゆかりも全くない場所、それなら移住相談会で「親身になって相談に乗ってくれたところに決めちゃおう!」と。それが高知県だった。
 そして高知県で何ができるかを検討した結果、農業に一番興味を持ったんです。それまでは農業は水をやって、肥料と農薬をかけてればできるだろうと思っていました。特に衝撃的だったのは全国の中でも高知県が一番進んでいたIPM(Integrated Pest Management:総合的病害虫管理)、農薬を使わずに天敵で害虫を防除する取組(天敵栽培)に、「虫に虫食わせるってなんじゃい!」と思いましたね。笑
 また、環境制御技術による増収の取組など、とにかく自分の持っている農業のイメージと180°違っていて、「おもしろい!」と思いました。

農業での起業を決意し、高知県へ移住

 「高知県で農業で起業する」と決めてからは、こうちアグリスクールなどに参加して、さらに情報収集を進めていきました。気になったらやってみないとダメな性分、十分に情報収集できたらとにかくやってみようと2016年8月に高知県立農業担い手育成センターへ入校しました。
 「1年間やってみて、自分には向いてないなと思ったら神奈川県に帰る。もし自分がやっていけそうだとなったら高知へ来てほしい」と両親にも説明しましたね。縁もゆかりもない土地、全く未経験の世界への挑戦だったこともあり、両親の全面的な理解はそのときは得られませんでしたが、一次産業には良いイメージを持ってくれていました。

新規就農に向けた農業研修をスタート

 高知県立農業担い手育成センターでは1年間農業の基礎研修を開始、農業の基礎や就農に対する考え方の基礎を築くことができました。
 高知県立農業担い手育成センターの研修で特に重要視したことは、自分に合った品目を選ぶことです。人間と作物の間にも相性があります。それは実際に体験してみないと分かりません。共通点もありますが、栽培する作物が変われば作業内容も変わります。それが自分に合っているかどうか。
 また、将来自分が農業経営を開始するとなったときに果たして現実的かどうか(投資額や労働時間、雇用人数など)も重要ですね。「○○を作りたい!」という思いもありますが、自分ができる(経営が成り立つ)視点で作物を選ぶことが大事だと思います。
 また、私は移住者だったので、作物の他に移住地(就農地)も考えなければいけません。1年後両親を高知へ呼ぶことも考えると、両親が生活しやすい地域を選ぶことが必要でした。
 これらを軸に研修に取組み、研修開始から約4ヶ月後に安芸市のナスで就農することを決めました。

安芸市のナスに決めた理由は、

  1. 自分自身とナスとの相性が良かったこと
  2. ナスの大産地であり、ナスを栽培する上で農業インフラが整っていたこと(選別や袋詰めなどJAの出荷場体制が整っている)
  3. 新規就農者に対する支援が厚く、サポートハウス(就農時に借受できるハウス)など移住者が就農しやすい体制が整っていたこと
  4. スーパーや病院など生活に必要なものがコンパクトにまとまっていて、両親も生活しやすい環境だったこと

などでした。

 作物と移住地が決まってからは、高知県立農業担い手育成センターで研修をしながら、毎月1週間程度、安芸市のナス農家さんのもとで短期研修をさせてもらいました。安芸市でナスと決めてから、その地域に早く飛び込んだことで、地元の人達に早くから知ってもらうこともできましたし、その後の就農まで円滑に進んでいったと今になって感じます。

安芸市での農家研修がスタート

 高知県立農業担い手育成センターでの基礎研修の後、安芸市に移り、ナス農家さんのもとで1年間実践研修を始めました。農家研修を始めるタイミングで両親も高知へ移住してきました。実際に移住してもらう前には、高知県内の観光地や安芸市を両親を連れて案内しました。事前に移住先を見てもらうことで両親も安心して移住することができましたね。
 研修受入農家さんのもとでの研修は、自分の失敗がその農家さんの経営に直接響くことになります。そのため、高知県立農業担い手育成センターでの基礎研修中に「絶対してはいけないこと」をしっかり頭に入れて農家研修に挑みましたね。

農家研修中に大事にしていた4つのポイント

松橋亮さん

  1. とにかくナスに触る・観察する
     農業は技術職、経験してナンボだと考え、とにかくナスを手入れすることを心がけました。
  2. 自分に合った作業の回し方を考える
     研修受入先の農家さんとは規模も人数も違うため、同じようにやってもできないと思いました。そのため、自分が新規就農したときはどうするかを常にイメージしていました。
  3. 経営計画の具体化
     農家さんのもとでよりリアルな農業経営に触れる中で、どういう農家になりたいのかを具体的にイメージしていきました。
  4. 自分に合ったコミュニティを見つける
     移住者なので、とにかく地域の方に自分の顔と名前を覚えてもらえるように努力しました。受入農家さんにも研究会など色々なところに連れて行かせてもらい、他のナス農家さんともつながりができ、その中でも自分に合ったコミュニティを見つけることを心がけました。

 この1年はとにかくナスに捧げましたね・・・。高知県立農業担い手育成センターでの研修とちがって完全に農家時間での研修生活になります。ハードな毎日で、慣れるまでは家に帰ったらすぐ寝ていました。笑
 2年間の農業研修を経て、2018年8月に安芸市のサポートハウスで新規就農しました。

新規就農1年目を終えて

松橋亮さん

 新規就農1年目を終えて、正直疲れました…笑
 油断すると病害虫にあっという間にやられてしまう。就農すると全てが自己責任なので、プレッシャーが大きかった。
また研修とのギャップもありましたね。研修は人から指示されて動いていましたが、就農すると自分で考えて動かなければいけない。自分なりに効率よく考えてやってみるんですが、思った通りにいかなかったことも多かったです。
 でも、「自分がやりたいと思ったことで生計を立てられる充実感」と「自分がやったことがダイレクトに結果として返ってくる」ので本当に充実した毎日でした。
 失敗もありましたが、毎日がむしゃらにナスと向き合い、終わってみると就農1年目から満足のいく成果をあげることができました。

ナス農家としてのビジョン

 新規就農3年目となる2020年夏からは、自分で新しく建てたハウスでナスを栽培する予定です。
 サポートハウスの借受期間は2年と決まっているので、就農3年目には自分の農地・ハウスで経営を開始しなければいけません。私は県外からの移住者のため、ハウスを建てる農地を探すところからのスタートでした。
 就農3年目にハウスを建てるには、就農1年目のうちに農地を確保しておく必要があります。分からないことだらけでナスを栽培している1年目で、農地も見つけていかないといけないので、本当に忙しい1年間でしたね。農地はマンションやアパートのように不動産屋に行けば簡単に見つかるものではありません。結果的には無事に地域の農家さんから農地を借りることができましたが、研修を受け入れてくれた農家さんをはじめ、地域とのつながりや信頼関係を自分で作っていったことが大きかったと思います。
 また、実際に就農してみて、人手不足の問題も痛感しました。今は父親に収穫を手伝ってもらって2人でやっていますが、父親も年をとってきたし、いつまでも手伝ってもらう訳にはいきません。近い将来は人を雇うことも考えていかないといけないと思っています。技術をさらに高め、高品質・高収量のナス栽培をしていくことで、経営を軌道に乗せていきたいと思っています。

高知県で新規就農を目指す人へのアドバイス

松橋亮さん

 移住就農に限ったことではないですが、情報収集や自己資金の確保など事前にしっかり準備して行動に移してください。
特に移住する場合は失敗したときのリスクが大きいです。移住相談会やこうちアグリスクールなどをうまく活用してみてください。
 興味を持ったら最後は実際に体験してみることですね。それをしないと前に進まない。こうちアグリ体験合宿などの農業体験に参加し、実際に見て・聞いて・感じることがとても大切です。
 就農して実感しましたが、農業は本当にやりがいがある仕事です。本気でやろうと思ったら、必ずあなたに合う就農の形がきっと見つかりますので、頑張ってください!